
この記事の要点
- 車検入庫率は「入庫台数 ÷ 満了到来台数」で測る先行KPI。月末の結果指標ではなく、毎週の進捗として見る。
- 取りこぼしの大半は「案内したが、反応がなく、そのまま追わなかった」層で起きる。未反応者を期日付きで可視化するのが対策の中心。
- 案内は満了3ヶ月前を起点に、初回案内→予約打診→追い込みの3段階で設計する。
- 呼び込みリストを6つの状態(未対応/案内済/予約済/入庫済/他社流出/廃車・売却)に分けると、どこで詰まっているかが状態の偏りに表れる。
- 呼び込みの自動作成は源泉×ブランドのルール設定が前提。漫然と全件流すのではなく、対象を絞ってから回す。
この記事で分かること
- 車検入庫率の正しい定義と、毎週見るべき理由
- 呼び込みリストを状態別に分解して取りこぼしを特定する方法
- 案内タイミング(3ヶ月前・2ヶ月前・1ヶ月前)の段階設計
- 入庫率を上げる週次マネジメントの回し方
対象読者:自動車ディーラーのサービスマネージャー・フロント・経営層|読了目安:約10分
はじめに:木曜の夕方、入庫予約表に空きが目立つ
木曜の夕方5時半。神奈川県の輸入車ディーラーで、サービスマネージャーの大久保(仮名)はピットの予約表を眺めていた。来週の月・火は埋まっているが、水・木に空きが目立つ。整備士の手は空いているのに、入庫がない。
事務の津田(仮名)に声をかける。「今月、車検の満了が来てるお客様、何台だっけ」「えっと……60台くらいだったと思います」「で、うちで取れてるのは」「……ちょっと、すぐには出てこないですね」
これが、多くのサービス現場で起きていることだ。満了が来る台数はなんとなく分かる。でも、そのうち何台を自社で入庫できているかは、月末の売上を締めるまで誰も知らない。
大久保の店では、車検満了の顧客リストは月初に紙で配られる。担当営業とフロントが手分けして電話をかけ、ハガキを送る。やっている。けれど、誰が何件かけたか、かけて反応がなかった顧客をその後どうしたかは、各自の手帳の中だ。
「ハガキは出してるんですよ。電話もしてる。でも、入庫率が去年と同じくらいから上がらない」
サービスマネージャーと話すと、この壁にぶつかっている人が多い。やることはやっている。チャネルも増やした。なのに数字が動かない。
理由ははっきりしている。「やった/やっていない」は記録されているが、「やって、反応がなく、その後どうなったか」が記録されていないからだ。取りこぼしは、まさにその空白で起きる。
この記事では、車検入庫率を月末の結果ではなく、毎週動かせる先行KPIとして扱う方法を整理する。リストの分解、案内のタイミング設計、週次の追い方まで、現場の段取りに落とし込んで説明していく。なお記事内で言及するRibbon(リボン)は、自動車ディーラー向けの統合管理SaaSである。
車検入庫率とは何か、なぜ毎週見るのか
車検入庫率とは、車検満了を迎える自社保有顧客のうち、自社で車検を入庫した顧客の割合を指す。式はシンプルだ。
車検入庫率 = 自社入庫台数 ÷ 満了到来台数(呼び込み対象台数)
たとえば今月満了が60台で、自社で42台入庫できれば入庫率は70%。残り18台は他社車検、ユーザー車検、あるいは廃車・売却で離脱した、ということになる。
重要なのは、この数字を月末の答え合わせにしてはいけない点だ。月末に「今月は65%でした」と分かっても、その月の18台はもう取り返せない。入庫率は、台数や整備売上といった結果指標とは性質が違う。満了の数ヶ月前から動かせる、先行KPIとして設計すべき数字だ。
なぜ毎週なのか。車検には満了日という明確な締切があるからだ。満了を過ぎれば公道を走れず、顧客は否応なく動く。つまり入庫率は時間の経過とともに必ず確定していく。だからこそ、満了の3ヶ月前から1週間単位で「今、どこまで取れているか」を追えば、間に合ううちに手を打てる。先行指標でマネジメントを回す考え方は、車検に限らず営業全般に通じる。詳しくは先行指標KPIで営業を回す|結果が出る前に動かす数字の設計で扱っている。
入庫率が落ちる本当の原因は「未反応の放置」
入庫率が伸びない最大の原因は、案内の量ではない。「案内したが反応がなく、そのまま追わなかった」層の放置である。
現場の実感に近い数字で考えてみる。満了60台に初回案内(ハガキ+電話)を打ったとして、即予約につながるのは肌感で2〜3割。残りの大半は「まだ先だから」「あとで考える」と保留する。ここまでは正常だ。問題はこの後。
- 初回でつながらなかった顧客(不在・留守電)
- 案内は届いたが反応がない顧客
- 「検討する」と言ったまま音沙汰がない顧客
この層を2回目、3回目とフォローできるかどうかで、最終的な入庫率は大きく変わる。ところが現実には、初回案内が終わると満足してしまい、未反応者は担当者の記憶からこぼれていく。他社の早期予約キャンペーンに先を越されるのも、たいていこの空白期間だ。この「2回目・3回目の追客を担当者の記憶に頼らない」という発想は、フォローアップを根性でなく仕組みにする自動化の考え方と同じ土台に立つ。
あえて言い切る。入庫率を上げる打ち手の8割は「新しいことを始める」ではなく「未反応者を取りこぼさない」に集約される。 新チャネルの導入より先に、まず未反応者が一人残らず期日付きで見える状態を作る。順番を間違えると、施策だけ増えて数字は動かない。
呼び込みリストを6つの状態に分解する
取りこぼしを潰す第一歩は、呼び込みリストを「やった/やっていない」の2値ではなく、進捗状態で分解することだ。最小限なら次の6状態で足りる。
| 状態 | 意味 | 次のアクション |
|---|---|---|
| 未対応 | まだ案内に着手していない | 初回案内を打つ(期日を切る) |
| 案内済 | 案内したが予約に至っていない | 反応の有無で追客を分岐 |
| 予約済 | 入庫予約が確定 | 前日リマインド・準備 |
| 入庫済 | 自社で車検入庫した | 次回車検・点検へつなぐ |
| 他社流出 | 他社・ユーザー車検で離脱 | 離脱理由を記録、次回奪還へ |
| 廃車・売却 | 対象外(買い替え・手放し) | 商談(買い替え)へ連携 |
この6状態に分けるだけで、どこで詰まっているかが一目で分かるようになる。
- 「未対応」が多い → そもそも着手が遅れている。人手か段取りの問題。
- 「案内済」で滞留 → 追客が止まっている。取りこぼしの主戦場。
- 「他社流出」が多い → 案内タイミングが遅い、価格・内容で負けている。
状態の偏りが原因を教えてくれる。実務ではさらに「案内済・電話不在」「案内済・反応なし」「予約前確認待ち」など細かく分けたくなる。Ribbonの車検点検呼び込みが17種のステータスを持つのはこのためで、現場が必要とする分岐はそれだけ多い。重要なのは状態を増やすことではなく、未反応者が"案内済"の袋に溜まったまま放置されないように、各状態に期日と次アクションを紐付けることだ。

案内タイミングは3ヶ月前から3段階で設計する
案内は「思い出したとき」ではなく、満了日からの逆算で段階を切る。標準的な3段階はこうだ。
3ヶ月前:初回案内(広く・低コストで)
満了3ヶ月前を起点に、ハガキまたはメールで広く一斉案内する。この段階の目的は予約獲得そのものより、「そろそろ車検ですよ」という認知と、早期予約特典の告知だ。コストの低いチャネルで網を広げる。
2ヶ月前:予約打診(個別に・電話やLINEで)
初回で反応がなかった顧客に、電話やLINE公式アカウントで個別に打診する。「ご都合のいい日はありますか」と日程に踏み込むのがこの段階。ここを担当者任せにせず、未反応者リストを期日付きで配るのが取りこぼし対策の肝になる。
1ヶ月前:追い込み(取りこぼし回収)
満了1ヶ月前でまだ動いていない顧客は、離脱のリスクが最も高い。最後の電話、あるいは来店時の声かけで回収する。ここで「他社で予約済み」と分かれば、次回車検での奪還に向けて理由を記録しておく。
3段階に分ける狙いは、チャネルを段階的に濃くしていくことにある。最初から全員に電話をかける人手はないし、最後までハガキだけでは届かない。広く始めて、未反応者にだけ手厚く——この設計が人手とコストの両方に効く。
なお「誰を呼び込み対象に含めるか」の前さばきも入庫率を左右する。源泉(顧客ステータス)×ブランドで対象を絞り込む考え方は、車検呼び込み自動作成ルールの設計|源泉×ブランドで対象を絞るで詳しく扱っている。
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入庫率を週次で追うKPI設計
入庫率を先行KPIとして回すには、週次で見る数字のセットを決めておく。月次の入庫率1本だけでは、月末まで打ち手が見えない。
| 指標 | 何を見るか | 異常のサイン |
|---|---|---|
| 満了到来台数(当月・翌月) | 母数。今月・来月に何台来るか | 翌月が多いのに着手していない |
| 着手率 | 対象のうち初回案内に着手した割合 | 月の前半で着手率が低い |
| 案内済の滞留件数 | 案内したが予約前で止まっている件数 | この数が積み上がり続ける |
| 予約済件数・入庫済件数 | 確定した予約・入庫 | 満了が近いのに予約が増えない |
| 暫定入庫率 | 入庫済 ÷ 満了到来 を週次で | 前年同週を下回り続ける |
この週次セットをサービス朝礼や週次ミーティングの定点にする。見るだけでは変わらない。先行指標で回すという考え方は数字を眺めることではなく、毎回**「未反応者の誰を、誰が、いつまでに追うか」を1人1件決める**ところまでやって、初めて意味を持つ。
予約が入った後の動きも忘れてはいけない。予約済からの当日キャンセル・無断キャンセルは、せっかく取った入庫を取りこぼす最後の落とし穴だ。前日のリマインドと、入庫日のピット・代車の準備までを呼び込みの一連の流れとして設計する。Ribbonでは入庫予約の日時を呼び込みのレコードに確定して記録できるので、案内から入庫当日までを同じ画面で途切れさせずに追える。
チャネルの使い分けとトーク例
チャネルは1本に頼らず、段階で濃くする。Ribbonが扱う呼び込みチャネルは、ハガキ・電話・メール・LINE公式アカウント連携だ。SMS送信は扱わない。
- ハガキ — 3ヶ月前の一斉認知。手元に残り、家族の目にも触れる。
- メール — 早期予約特典の告知、開封状況の把握。
- 電話 — 2ヶ月前以降の個別打診。日程に踏み込める唯一の同期チャネル。
- LINE公式アカウント — 友だち登録済み顧客への気軽なリマインド。車検満了が近づいた顧客へのリマインダー送信にも使える。
トーク例として、2ヶ月前の電話打診はこう組み立てる。
「お世話になっております、○○モータースの大久保です。お車の車検が来月末で満了を迎えますので、早めにご案内のお電話をいたしました。今月中にご予約いただくと、代車を確実にご用意できます。土日ですと先に埋まってしまうので、ご都合のいい週だけでも先に押さえておきませんか」
ポイントは、**「満了が近い」という事実 + 早く決めるメリット(代車確保・希望日確保)**をセットにすること。値引きを前面に出すより、希少性と段取りの安心感で予約を引き寄せるほうが、価格競争に巻き込まれにくい。
未反応で電話もつながらない顧客には、LINEで一言添えたうえでハガキで再案内、と非同期チャネルで接点を残す。「つながらなかった」で終わらせず、必ず次の接点を予約しておく。これが取りこぼし対策の徹底だ。
Ribbonが備える車検入庫率管理機能
Ribbon(リボン) は、車検の呼び込みから入庫までを一連の流れで管理する機能を備えている。ここに挙げるのはすべて実機能だ。
- 車検点検呼込 — 呼び込み対象を17種のステータスで進捗管理。未対応・接触・検討・予約・結果・対象外の6フェーズに分かれ、入庫予約日時を確定して記録できる
- 保有車両 — 車検満了日を基点に、満了が近づく顧客を母数として捕捉。呼び込み対象の抽出元になる
- 統合ダッシュボード — 「車検点検呼び込み」タブで対応状況を集計。状態別の件数と進捗を1画面で俯瞰できる
- アタックリスト — 未反応者を計画的に追客する活動リストとして運用し、対応進捗を記録
- LINE車検リマインダー — 保有車両の満了日を起点に、LINE公式アカウントでリマインダーを送信(標準30日以内、設定可)
- 車検満了リマインダー(自動タスク生成ルール) — 保有車の車検満了日から逆算し、満了の90/60/30日前に担当営業へフォロータスクを日次バッチが重複なく自動生成。設定画面の「テンプレートから作成」でワンクリック有効化でき、未対応の取りこぼしを担当者の手元タスクとして起こせる

- EDMキャンペーン — 早期予約案内のメール作成・送信、開封・クリックの参考値把握
呼び込みの自動作成は、源泉(顧客ステータス)×ブランドのルール設定が前提である点に注意したい。漫然と全件を流すのではなく、対象を定義してから回すことで、案内の質と入庫率の両方が上がる。
よくある失敗パターン
失敗1:入庫率を月末にしか見ない
最も多い。月末に「今月は何%だった」と振り返るだけでは、取りこぼした台数は戻らない。週次の暫定入庫率を定点にする。
失敗2:「案内した」で記録が止まる
初回案内を打った時点で対応済み扱いにすると、未反応者が見えなくなる。案内後の反応・次アクション・期日まで記録して初めて追客が回る。
失敗3:呼び込み対象を絞らずに全件流す
満了が来る全車に同じ案内を一律で送ると、対応のリソースが分散し、本来取れる顧客への手が薄くなる。源泉×ブランドのルールで対象を定義してから回す。
失敗4:予約後の準備を呼び込みと切り離す
予約が取れて一安心して、当日のピット・代車の準備が抜けると、無断キャンセルや顧客満足の低下を招く。案内→予約→入庫当日までを一連の流れとして設計する。
失敗5:担当者個人の手帳に依存する
誰がどこまで追ったかが個人の手元にあると、引き継ぎや店全体の進捗把握ができない。店で共有できる状態にして初めて、マネジメントが介入できる。
よくある質問(FAQ)
車検入庫率とは何を指す数字ですか?
車検の案内はいつ始めるのが適切ですか?
入庫率が低い原因はどう特定しますか?
取りこぼしの大半はどこで起きますか?
呼び込みのチャネルは何を使い分けますか?
Ribbonで入庫率はどう管理できますか?
まとめ
- 車検入庫率は「入庫台数 ÷ 満了到来台数」で測る先行KPI。月末の結果ではなく、毎週の進捗として追う
- 取りこぼしの大半は「案内したが反応がなく、そのまま追わなかった」層で起きる。未反応者を期日付きで可視化するのが最優先
- 案内は満了3ヶ月前を起点に、初回案内→予約打診→追い込みの3段階で設計する
- 呼び込みリストを6つの状態に分解すると、どこで詰まっているかが状態の偏りに表れる
- 呼び込みの自動作成は源泉×ブランドのルール前提。対象を絞ってから回すと質も率も上がる
車検は、満了日という締切が必ず来る。だからこそ、入庫率は間に合ううちに動かせる数字だ。月末の振り返りから、毎週の打ち手へ。最初の一歩は、リストを「やった/やっていない」から「6つの状態」に分け直すことから始まる。
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